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SEEN REPORTS

レイゲートの洞窟

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テムズ川を渡り、時間を巻き戻す様に過ぎ去る風景を眺めながら、電車で南下する事40分。

1900年代初頭、当時貴重だったガラスの原料となる砂を採掘する為に張り巡らされた地中の空洞。
" Reigate Cave / レイゲートの洞窟 " へと潜り込んだ。

無数の生活の残骸が、かつてそこで働いた人々の痕跡として今も時間から切り離されていて。

一年に数日だけ訪れる、人との接触の機会をどこまでも続く暗闇の中で待ちわびるように。

その空気を日常とは別の空気へと発酵させていた。

地中に広がる空白と、それを埋める為に存在する膨大な量の暗闇。

まとわり付く様な濃い湿り気とは対照的に、カサカサと触れれば剥がれ落ちる壁、砂、石。

無数の破片と朽ちた木材が散らばり、洞窟特有の退化を遂げた道具が様々無作為に存在していた。

  • レイゲート,洞窟,イギリス,廃墟,荒廃暗闇の中の広大な空間。
  • レイゲート,洞窟,イギリス,廃墟,荒廃無秩序に作業台に取り残された道具。

洞窟特有の湿気が、そこに在る全てのモノを長い時間をかけて少しずつ蝕み。
他では見る事の出来ない劣化を引き起こしていた。

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  • レイゲート,洞窟,イギリス,廃墟,荒廃地面に散るのは、かつての宴会の残骸。

広大な地下空間には、バーや射撃場まで作られていて。

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触れるだけで剥がれ落ちる壁は
砂遊びで開けたトンネルの様に、ふとした振動で簡単に壊れてしまいそうで。

そんな脆い空間では、空気の震え方も変化し
耳にするあらゆる音まで、少し違って聞こえてきた。

  • レイゲート,洞窟,イギリス,廃墟,荒廃地面に積もる砂。
  • レイゲート,洞窟,イギリス,廃墟,荒廃そして無数の銃撃の残骸。
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視界を遮る仕切りを、一つまた一つとくぐり抜けると。
空気の質もまた、グラデーションを伴って徐々に変化していく。

昇降を繰り返すうちに、自分の位置すら不明瞭になり。
洞窟を出ると、体を包む全てが、どこか何かが違うと気がつく。


階段を上ると、光。

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暗闇に慣れすぎた感覚をゆっくりと冷ますようにビールを飲んだ。
見上た空は、驚くほど青く明るかった。

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