タイトル画像
SEEN REPORTS

聖ベルナルディーノ教会納骨堂

初夏、朦朧とした意識を濃厚なエスプレッソで無理矢理に覚まし、ミラノの早朝を満たす心地良い光の中を歩く。

500年の歳月をかけ、今も建設を進める、美しい大理石ドゥオーモを横目に、人気の無い住宅街へ歩を進めると、目的の小さな教会がこっそりと建っていた。

聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨

この教会の歴史は外見から比べると遥かに長く、1210年まで時代を遡ることになる。

当時、教会の向かいには病院と墓地とが建ち並び、教会の脇には納骨堂として、その墓地の骨を納める為の奇妙な小部屋が作られた。

そして時は移り1679年、時代はロココ。 " Giovanni Andrea Biffi " の手によって、その小部屋の壁全面に、今に残る人骨装飾がなされたのがこの頃。

しかし、不運にもその33年後には、教会のほとんどの部分が火によって破壊され、本体であるはずの教会を失ったその小部屋は、逆に一人その場所に残されることとなった。

当然、新たな教会が再建されることとなるのだが、その時、新しく建てられた教会と、この奇妙な小部屋とが、細い回廊を介して繋げられたことで、今の形として完成を迎える。

そんな複雑な歴史を経て形成された教会の脇から奇妙に続く、細く小さな廊下の先。そこは、今の時代には決して創造することの出来ない装飾を今に残していた。


小さな木製のドアを開くと、正面に広がる美しい礼拝堂が一際目を引く。

  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨

そこでは早朝から多くの人々が祈りを捧げ。
教会特有の静かで深い時間がゆったりと流れていた。

十字を切り、その新鮮な空気を肺に送り込んでから、異なった空気の流れに沿って薄暗い回廊を進む。

  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨

すっと、開け放たれたドアの先へ。

開けた空間に落ち込む美しい朝の光の中。

4面を埋め尽くす様に、宗教上の文様が人骨によって形成されたロココ調の装飾群。その空間のもつエネルギーに圧倒され息を飲む。

  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 部屋の中央には先ほどの教会同様の、祈りの為の椅子が備え付けられていた。

    腰を下ろし。
    十字を切り。
    天を仰ぐ。

    広がるのは、1695年 " Sebastiano Ricci " に寄って描かれた " Triumph of Souls and Flying Angels " と題された美しいフレスコ画。

  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨

そして、部屋の正面には神聖なマリアの蝋人形が、そんな天に祈りを捧げる。

  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨
  • 聖ベルナルディーノ教会,納骨堂,墓地,アンティーク,骨,頭蓋骨,人骨

この奇妙な空間の中で、しばらく落ち着きを待ち。
祈りを捧げ、やがてその場所を後にする。

教会を出て振り返ると、真青な空に真白い石肌が妙に生々しく映えて見えた。

SEEN REPORTS