英国家具とインテリアの歴史
イギリス国内で唯一の家具とインテリアを専門とする博物館である " Geffrye Museum / ジェフリー博物館 "
18世紀に建てられた金物業者の養老院という珍しい建物の内部には、17世紀から20世紀までの各時代ごとに部屋が作られ、当時の暮らしを再現する為に、それぞれの時代に使用されていた家具やインテリアを集めた興味深い展示がなされています。
各時代の生活を覗き込む事の出来るこの博物館の様子と、その時代特有のアンティーク家具や部屋、暮らしの特徴を交え紹介していきます。
正面の鉄製の柵をくぐると、夏には博物館の前に広がる新緑の光景に息を飲みます。
そんな緑を分け入って中に入ると、まず待ち構えるのは各時代を代表する著名人の使用した「椅子」
人間の生活とは切る事の出来ない、最も身近な家具の一つである「椅子」を通じ、家具の特徴の推移を観る事が出来ます。
そしてその先には、常設される各時代を再現した部屋と興味深い解説の数々が。
- ※ 1630年代の入り口の広間
- ※ 1790年代の「Parlour」
1630年代の入り口の広間の様子を再現したスペースには、かなり無骨な印象を受ける木製の家具が並び。
1790年代の「Parlour」と呼ばれるこのスペースは、家族が集まって食事をするための場所であり、時に客人を招き入れての交流が行われていました。
家具や装飾も徐々に華やかさを増していきます。
- ※ 1830年代の書斎の様子を再現した部屋。
- ※ 1870年代の書斎の様子を再現した部屋。
当時の書斎は家族のくつろぎの場であり、読書をしたり、音楽をきいたり、絵を描いたりと、各々が趣味を満喫する場所でした。それ故、備え付けられている家具は小振りな物が多く、これは個々の都合に応じてレイアウトを変更し易くする為。
そして1870年代、当時のロンドンで一番メジャーだった造りの家の書斎を再現したこの部屋は、家族内の女性に特に好まれていました。
客人を迎え入れる際にも使用されていた部屋であり、壁からカーテン・床に至るまで、あらゆる家具や装飾が現在に比べ繊細に作られ、また、刺繍を彫り込んだクッションカバーなど、ホームメイドの物も多く使用されていました。
やがて1930年代の自宅の居間は私たちの良く知る風景に近づきつつ有ります。
装飾性は徐々に薄れ、後に起こるシンプル・モダンの流れを読む事ができます。
このように、各時代を通じた部屋と家具、そしてそこに住む人々の暮らしまでもを総括して観る事のできる機会は極めて珍しく、特化した博物館ならではの驚きを与えてくれます。
また、11月25日から1月4日までの期間には、イギリスのクリスマスの移り変わり示す展示を行っていて、毎年恒例で行われるこの試みは、過去400年に渡るイギリスのクリスマスを各時代の部屋で再現し。その時代に合った背景の部屋の中に、その時代に合ったデコレーションを飾りつけ、イギリス家庭のクリスマスの400年間を楽しむことができるます。