人形の館。フランスアンティークドールのコレクション
パリ、ポンピドゥーセンターから僅かに道を折れ、静かな路地の奥へと迷い込むと、そこには1800年〜1945年にかけて製造された人形のコレクションを所蔵する " Musee de la Poupee / 人形博物館 " がひっそりとその門を構えます。
館内には各時代・各様式の大小さまざまなアンティーク・ドールたちが納められたショーケースが並び。
その小さな身に纏われる繊細な衣装の数々と、奇妙なまでに作り込まれた小道具たちは、そこに暮らす美しい人形にありありとした生を与えます。
人形の館。フランスアンティークドールのコレクション
内部に入るやいなや、沢山の人形が納められたショーケースがどこまでも続き、その上には当時の人形の為の道具の数々までもが所狭しと展示されています。
19世紀、それまで木製の手工芸品であった為に量産のかなわなかった人形が、「ビスクドール」と呼ばれる磁器製の人形の出現によってすこしづつ生産を始めると。
当時のヨーロッパで産業革命と共に発明されたミシンによって、人形たちもまた、持ち主同様のより贅沢な衣装を身に纏う様になり、それらはやがてファッションドールと呼ばれる頭身の婦人の姿として、その当時の流行の洋服を身に纏うこととなるのです。
メインで並ぶのは、そんな19世紀の時代と国をまたいで並ぶ膨大な数の人形たち、それぞれがそれぞれの時代の生活を写す鏡のようでもあり。
一点一点、丁寧に焼き上げられたビスクドールの表情と、レースで作られた美しい洋服や、木材や陶器で作り込まれた家具や小道具の数々は、それがそのまま当時の生活の記録となって今に残ります。
そんな、人形たちの息づかいさえも感じられるほどの精緻な作り込みに感動を覚えつつも。
ペンキの剥がれた木製の球体間接人形や、紙製の人形の衣装の美しさにしばし心を奪われていると。
そんな気持ちを見透かしているかの様な、ビスクドールたちのガラス目玉のぎらぎらとした視線を感じ、あわてて博物館を後にしました。